【本好きの下剋上】本をこよなく愛する主人公の成り上がりと侮るなかれ
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今回おすすめするお話はこちら。
香月美夜先生著作、『本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~』。
アニメ化もされており、ご存知だという方も多いのではないでしょうか?
『このライトノベルがすごい! 2023』では、堂々の殿堂入りを果たした人気作品です。
小説家になろうに掲載されているあらすじは、2023年1月7日現在は以下の通り。
本が好きで、司書資格を取り、大学図書館への就職が決まっていたのに、大学卒業直後に死んでしまった麗乃。転生したのは、識字率が低くて本が少ない世界の兵士の娘。いくら読みたくても周りに本なんてあるはずない。本がないならどうする? 作ってしまえばいいじゃない。目指すは図書館司書! 本に囲まれて生きるため、本を作るところから始めよう。※最初の主人公の性格が最悪です。ある程度成長するまで、気分悪くなる恐れがあります。(R15は念のため)
本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~
導入部分でつまづいた、という声をいくつか聞いていますが、そこを乗り越えたら最後まで一気読み間違いなし。
わたしの場合は、途中まではそれなりに楽しみつつだったのですが、第二部の終わりで起きたとある事件以降、一気にのめり込むことに。
有休消化中の2週間くらい、人間生活を捨てていたと思います。
知識チートものだけど、実は試行錯誤だらけ
『本好きの下剋上』の面白いところは、異世界転生した主人公・マインが持っている知識で無双する……かと思いきや、それができない理由づけがしっかり記述されていること。
そのため、マインは周囲の人の手を借りながら、試行錯誤を繰り返して本作りを行います。
事実、一冊目の本ができあがるのは、物語スタートから作中時間二年後(なろうでは117話目)のことです。
他の作品では、ものづくりものだとしてもほんの一瞬で本が完成するので、一線を画した存在ではないでしょうか?
その過程でマインはさまざまなことを学び、その学びは今後に生きてくるようになります。
この過程がなければ後の成り上がりが成り立たない、といっても過言ではありません。
何周もしたくなる! 緻密で長期的な伏線の数々
全677話、5,681,540文字という超大作である『本好きの下剋上』ですが、伏線がすごいんです!
一周目で分かる伏線もあれば、二周目で気づく伏線もあり、それどころか何周も何周もしてやっと気づけるような伏線までさまざまです。
わたしもそれなりに周回しているつもりですが、気づいていない伏線がまだまだ大量にありそう……。
個人的に気づいた人すごい! と思った伏線は、下記の部分。
「えーと、ブロン男爵からの紹介で、グラーツ男爵のところに行くそうです。士長の印章が必要ですね」
トゥーリの洗礼式
闇の神と光の女神の神話が終わると、ジルヴェスターが今年結婚する新郎新婦の名前を呼んだ。
星結びの儀式 貴族編
「グラーツ男爵子息ベルンデット、並びに、ブロン男爵令嬢ラグレーテ」
この抜き出しだけでは分からないと思うので、ぜひ本編を読んでください。
そしてこの意味に気づいてください。
話の主軸にはまったく関係のない、ただの脇役です。モブキャラたちです。
にもかかわらず、しっかりと時間経過も含めてキャラクター設定がなされているんですよ。
それに気づいたら、「トゥーリの洗礼式」の時に「星結びの儀式 貴族編」で婚姻する二人が家の準備を始めたのだと分かります。
そんな驚きがたくさん、たくさんあるのです。何度周回しても新たな発見に出会えるのです。
ちなみに今回例にあげたものは20話から183話へのパスですが、もっと長いパスもあるのでご安心ください。
主人公視点だからこそのストーリー
本編はどれも主人公視点で進みます。
そして主人公視点だからこそ見えないこと、そして読者には知り得ないことがたくさんあります。
その公開の取捨選択が絶妙なのです。
また、商業版では書き下ろしとして他者視点の話が多数追加されており、そこで新たに知る事実、あるいは周囲から見たor主人公視点では見えない事実が多数明らかになります。
ですが、それでこれまで公開されてきた物語と齟齬がでることはなく、ただただ物語の深みが増すのです。
なろう系に限らず、Web初の小説でここまで骨太な作品は少ないのではないでしょうか?
ぜひ一度、お手に取ってみてください。
商業版は今年、完結予定とのこと。今から楽しみです!
以下、ネタバレありの感想です。
家族愛っていいよね。
感想を一言で言うなら、これかなあと。
主人公だけでも、日本での家族、下町の家族、貴族の家族、養子先の家族、と四つが描かれます。
主人公以外にもたくさんの家族関係が描かれ、そのすべてが「いいよね」と単純に言える環境ではない、というのがまた好きです。
同一の物事を見ていても、見る人が変わればまったく違うものに見えるものです。
家族関係に関わらず、そういった「異なる視点」への想像力を『本好きの下剋上』は掻き立ててくれるように思います。
そして何より考察も捗る。考察厨にはたまらない作品です。大好き。
お好きな着眼点で、すでに読んだ方もそうでない方も、ぜひ『本好きの下剋上』を読んでみてはいかがでしょうか?